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当院で経験した急性心不全・心不全急性増悪者の動向(2021.6~2022.5)
  • 当院で経験した急性心不全・心不全急性増悪者の動向(2021.6~2022.5)

    当院で2021年6月より2022年5月の1年間に経験した急性心不全症例、慢性心不全の急性増悪(以後急性増悪)症例についての動向を検証しました

    急性心不全状態で初診した方が7名、重症度分類ステージBで加療した方が急性心不全を発症して受診した方が18名、慢性心不全ステージCの状態で治療していた方が急性増悪された方が18名の計43名を診療しております。
    急性心不全発症又は急性増悪時の年齢は男性80.8歳、女性86.8歳と平均寿命より1歳程度低い年齢での発症でした。2020年厚生労働省からの発表によると男性の28.4%、女性の52.5%が90歳時でも生存しておられ、80歳以上では癌による死亡者数よりも心血管病変による死亡者数が多くなり、死亡年齢最頻値は男性88歳、女性92歳であることから、超高齢者の慢性心不全を含めた心血管病の治療をいかにするかが開業医としての重要な課題と考えられます。

    1年間の急性心不全・心不全急性増悪患者
    2020年平均寿命、死亡年齢最頻値、90歳時生存、健康寿命

    心不全発症後、総合医療センターで入院治療された方が18名、総合医療センターの外来での治療となった方が2名、市中病院へ紹介し入院治療された方が8名、当院での外来治療の継続で症状改善をはかった方が8名、当院関連の介護施設“サービス付高齢者向け住宅プルメリア”内で治療した方が6名、在宅のままで治療した方が1名でした。

    急性心不全発症、急性増悪後の経過

    総合医療センターへ紹介した患者さんはHFpEFの患者さんが50%で、クリニカルシナリオ1の重症な患者さんが多く入院中に、冠動脈形成術、カテーテルアブレーション等の非薬物治療を受けられている方がおられました。総合医療センター退院後は、約半数の患者さんが逆紹介され当院での慢性心不全の治療を継続しております。

    総合医療センターへの紹介
    総合医療センターへの紹介
    総合医療センターへの紹介
    総合医療センター入院後の経過

    市中病院へ紹介し入院の上で治療をしていただいた患者さんはHFpEF,HFmrEF病態の方がほとんどで、心不全として重症度はそう高くないか、超高齢で認知症を合併している方が多く、介護の都合等で、家族の方が希望された病院への紹介で治療となっております。
    75%の患者さんが逆紹介され、退院後は当院の外来で治療を継続しております。

    市中病院入院

    当院関連の“サービス付高齢者向け住宅プルメリア”に入居されており、心不全発症、急性増悪された患者さんは超高齢者が多く、施設入居前に病院での入院治療経験があり、その際に認知症の悪化、ADLの極端な低下がみられた経験があります、さらに御家族の方がcovid19感染の蔓延のため、入院すると面会ができないため、施設内での看取りを含めた治療を希望されておりました。施設内で従来の治療に加えた薬物療法や、時にはドブタミン持続点滴等の治療、さらには末期心不全の緩和ケアを行っております。

    施設内での治療

    心不全発症、急性増悪しているものの酸素化が保たれ、ADLも低下していないか、本人が入院を希望されない場合は、外来治療で経過をみておりました。すべての方にエンレスト導入を含めた薬物療法の追加にて病状は落ち着いております。2名の方は自宅での介護力がないために、家族の方の希望で総合医療センターへ紹介し入院となっております。

    外来治療

    御一人、他院から末期腎不全のため寝たきりとなったため、在宅療養目的で紹介を受けた患者さんが、拡張型心筋症の慢性心不全の急性増悪状態でした。すでに末期心不全、心臓悪液質状態で、本人家族とも在宅での看取りを希望されたため在宅にて心不全緩和ケアを行っております。
    2022年5月末の時点で分かっている範囲内では43名中4名の方が亡くなられておりました。

    在宅療養
    急性心不全患者の経過

    心不全の原因疾患としては病院からの報告に比べれば、高血圧性心疾患と、心房細動を含めた不整脈患者が多くみられました。心不全となった基礎疾患としては、高血圧、CKD、糖尿病が多く心不全ステージBでの厳格なコントロール必要性が実感される状況でした。
    また併存症としての心房細動への対応、ならびに認知機能低下した方への対応を今後考慮する必要があると考えられます。

    心不全の原因疾患
    基礎疾患・併存疾患
    LVEFによる分類
    ステージB→ステージCへの誘因

    急性増悪の誘因としては、患者側要因の方が医学的要因より多く関与している例が多く、患者側要因でも塩分・水分の過剰よりは、高齢者のフレイルとそれに伴う栄養不全、さらにはNYHAⅢ、Ⅳ度例の11~12%存在しているといわれている心臓悪液質がより重要となっていくのではないかと考えられます。

    ステージCでの急性憎悪の誘因
    心不全再入院の原因
    患者要因としての問題

    さらに老々介護であったり、認知症がこれらの病態をさらに修飾していく可能性があるため、在宅での心不全療養指導師の果たす役割が多くなると考えられます。