2022年6月より2023年5月までの1年間に経験した急性心不全例、慢性心不全の急性増悪(以後急性増悪)例についての動向を検証しました。
急性心不全状態での初診した方が9名、重症度分類ステージBで加療していた方で急性心不全を新規に発症して受診した方が7名、慢性心不全ステージCの状態で治療していた方が急性増悪の為受診された方が17名、慢性心不全ステージDの方で心不全の末期状態となり終末期を迎えられた方が5名の38名を診療しました。
急性心不全又は急性増悪発症時の年齢は男性81.7歳、女性78.8歳でした。
日本循環器学会による循環器病の診断と治療に関するガイドライン2011;循環器疾患における末期医療に関する提言に基づき、「心不全の末期状態(end-stage)」とは、適切な治療を行っても心不全症状を訴え、点滴薬物療法が頻回に必要又は6ヵ月に1回以上の入院が必要となるような低左室収縮能の状態で終末期に近いと判断される病態。
「心不全終末期(end-of-life)」とは、繰り返す病像の悪化あるいは急激な増悪のため、死期が間近にせまり(予測される予後が2-3週間以内)、治療の可能性がない末期状態。と判定しております。
心不全発症又は急性増悪後に、総合医療センターへ紹介し入院治療された方が20名、総合医療センターへ紹介後に外来治療された方が1名、市外病院(山口赤十字病院、済生会山口総合病院、宇部医療センター)へ紹介し入院治療された方が3名、市中病院へ紹介し入院治療された方が6名、当院関連の介護施設“サービス付高齢者向け住宅プルメリア”内で治療した方が7名、在宅で治療した方が2名、当院外来のままで治療した方が2名でした。
動脈形成術、カテーテルアブレーション等の非薬物療法を受けられたり、弁膜症の手術を受けられた方がおられました。半数の10名の方は逆紹介を受け、当院で慢性心不全の治療を継続しております。
新型コロナウイルス症例蔓延のため総合医療センターが満床時には、山口赤十字病院、済生会山口総合病院へそれぞれ1名緊急入院をお願いしました。いずれの患者さんもその後、カテーテルアブレーション、弁膜症の手術となっております。また、新型コロナウイルス感染発症により慢性心不全が急性増悪となった患者さんは保健所の手配で山口宇部医療センターへ入院され治療されましたが同院で死亡されております。
6名の患者さんを市中病院へ紹介し入院の上治療していただきました。
多くは介護施設入居中又は在宅で寝たきりの高齢者で病状安定後は入院前と同様に施設ないしは在宅で療養されております。
当院関連の介護施設“サービス付高齢者向け住宅プルメリア”に慢性心不全ステージCのため入居されていた7名の患者さんが心不全の増悪を繰り返しステージDとなりさらに心不全の末期状態となられております。本人、家族の方も病院への入院は望まれない(新型コロナウイルス蔓延のため面会制限等もあったことも要因)ため施設内で心不全治療(2名の方は心不全症状緩和のためドブタミンの持続点滴を施行しております)を続けながら、心不全の末期緩和ケアを行いながら看取りとなっております。
心不全の末期状態から終末期となっても、本人が強く在宅療養を望まれた2名の方は家族のサポートもあり在宅緩和ケアを行い在宅での看取りとなっております。
心不全の急性増悪となったものの酸素化が保たれておりADLも維持されていた2名は外来での内服剤の調整で治療を継続しております。
今回はステージDから末期心不全となり施設又は在宅で心不全の緩和ケアの後、看取りとなった方が多くおられました。積極的な治療を望まれた方の死亡率は11%でした。